現行の「学習指導要領」は、2020年3月に公示されました。「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の教育水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程の基準であり、約10年に1度改定されています。今回の改定では、「生きる力」をはぐくむという理念の実現に焦点があてられています。「生きる力」とは、人工知能の普及やインターネットの生活への浸透により、社会や生活が大きく変わると予想される時代に変化を前向きに受け止め、人生をより豊かにしていくためにどうすべきか主体的に考え出すことができる力とされています。今後、社会が予測困難に大きく変動しても、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、自らの思い描く幸せを実現してもらいたい、そうした思いが新学習指導要領にはこめられているのです。
文部科学省が定義する「生きる力」とは「知・徳・体のバランスのとれた力のこと」と表現しています。
1)知=確かな学力
基礎、基本を確実に身につけ、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力。
2)徳=豊かな人間性
自らを律しつつ、他人と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性。
3)体=健康・体力
たくましく生きるため健康で過ごすことや体力をつけることなど。
また、文部科学省は「生きる力」を身につけるための3つの柱「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」をあげています。
さて、後期に入り、キャンパスでは3年生の進路活動が活発です。すでに上級学校への受験を経験した生徒、結果を手にした生徒、奮闘中の生徒とそれぞれです。多くの生徒が、高校卒業後の進路選択に悩み、不安を抱きながら取り組んでいますが、我々教職員も、日々彼らの奮闘を後押しすべく奮戦しています。そんな慌ただしい毎日ですが、いずれの進路に進んでも、一人一人の今後の人生が幸多からんものであることを願うばかりです。幸福感の度合いは人により異なるものですが、一度しかない人生がその人にとって幸せだと感じることができるものであってほしいと切に思います。
これからの社会では、「生きる力」は必要かもしれません。しかし幸福感を得るためには「生きがい」が必要です。つまり「自分はこのために生きているんだ」という生きる原動力のようなものです。「生きがい」は、「自分らしくいられる」「喜びを感じる」「自分が成長している」「誰かの力になることができている」ことを実感することかなと思います。人によりそれは異なるかもしれません。生きがいを見つけるためのヒントは自分が好きなことや得意なことにあります。そのためには自分のことを知らないといけません。それを知るためには何事にもチャレンジしてみることだと思います。新たなチャレンジでも、目の前にあることでも、しっかりと取り組むことで自分を知ることにつながります。高校生の今をどう過ごすかは自由です。その自由な時間を、自分の人生に必要な「生きる力」と「生きがい」を得るために是非充ててもらいたいです。
今日、お坊さんを見かけたことで、ふと釈迦の言葉が頭をよぎりました。
「天上天下 唯我独尊」
解釈の違いはあるかもしれませんが、「人間は他人と比べる必要はなく、存在そのものとが尊い」ということだと理解すると、一所懸命に生きている生徒一人一人に改めてエールを送りたくなりました。
一度しかない人生だからこそ、「生きがい」を得て幸せを掴んでほしいと感じた今日この頃です。